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田辺青蛙 『生き屏風』

第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作含む3編の連作短編集。
酒屋の奥方が取り憑いた屏風。県境に棲む「妖鬼」が、その屏風のお相手を依頼される。表題作から同時収録の2作まで、同一設定・世界環境下の短編集である。
屏風に奥方が取り憑いても面倒程度にしか捉えない旦那と小間使い。人間たちの生活の中に、鬼だのしゃべる猫だの狐だの非現実的なモノが自然と馴染んでいる世界。ホラー小説大賞ながら、ほのぼのとした空気が流れ続ける。雰囲気作りの巧さは素晴らしいが、はみ出るような才能は感じられず、物足りなさが残るのが正直なところ。