書は言を尽くさず、

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森博嗣 『タカイ×タカイ』

なるほど、個人の安全というものは、実に複雑に絡み合ったシステムの中でバランスが取られているのだ。人間を一人抹殺することは、自分の存続に重大な障害になるような仕組み、結局は、自分の利害や安全が、他人のそれらと関連することで成り立つようなネットワークが作られた。だからこそ、かろうじて守られている。独立させないことで、独立を維持するのだ。波に波を重ねて打ち消すようにして、見かけの静寂が守られている。

Xシリーズ第3作。
マジシャン宅にて上空に掲げられた形で発見された死体にまつわる事件。
シリーズも3作目まできてようやく、というわけでもないだろうが、森博嗣節が登場人物から頻繁に見られるようになり、感性を刺激される。
また、物語を牽引する謎も、前2作に比べ派手で魅力的である。
既存シリーズでお馴染みの登場人物との繋がりも増え、パズルのピースが嵌まっていく楽しみもあるい。ただ、逆に言えば「いつもの」彼ら彼女らに頼りすぎな感も強いのだが。