書は言を尽くさず、

本読んだりしています

森博嗣 『工学部・水柿助教授の解脱』

理屈というのは、ちょっと良い気持ちを少し展開して増幅するか、または、ちょっと嫌な気持ちを少し包み込んで減退するか、そんな機能の装置なのだ。

水柿シリーズ第三作。
内容は軽く殺人事件も起こらず、水柿助教授とパートナー・須摩子さんの日常をただただ発信し続ける当シリーズ。読みやすい文体ではあるが、ユーモアや哲学的至言がふんだんに盛り込まれているため、どうしてもじっくり読み込んでしまう。
パスカルという犬を飼い始めること、小説で得たお金のこと、本書はこの2つの事柄に関する話題が頻出する。これらについては、まぁまず著者・森博嗣の考え方をすべて投影した内容なのではないかとは思う。著者の考え方の特異さを求める人にとっては、このシリーズは至宝に近い位置付けだと思う。