書は言を尽くさず、

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法月綸太郎 『犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題』

本格ミステリ6編収録の短編集。
星座に関連した犯罪・謎の数々というコンセプトで描かれた、著者と同名の推理作家が探偵役として活躍する短編集。本書は、12星座のうち前半6つ(牡羊座〜乙女座)までを一冊にまとめたものである。
本格ミステリにおいて、事件発生→探偵役の登場・推理→解決というパターンは定型化しており、ロジカルな部分に拘りを持ち、構造的なトリックを用いることが少ない著者においては、殊更マンネリ化の傾向に陥りやすい。
本書においては、ホームレス・劇団・リゾートホテル・アレルギー・芸能界・都市伝説等、短編ごとに異なる題材を用い、それぞれの謎を星座という象徴に絡ませることで筋に工夫を凝らし、読者を飽きさせない努力を見せている。
勿論、著者お得意の論理性は健在。安心して読める職人芸に近い。