書は言を尽くさず、

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小林泰三 『ネフィリム 超吸血幻想譚』

『ΑΩ 超空想科学怪奇譚』に続く、大真面目にSF・ホラーに取り組むシリーズ第二段。
人間と吸血鬼とそれらを超越するものの対立関係・物理的衝突を、人間側・吸血鬼側の視点を交差させ描く。
眉を顰めるグロテスクな描写や、戦闘シーンにおける実に科学的な解釈は、著者の作品ではお馴染みの要素だが、本作においてはそれらの度合いは控えめである。特に『ΑΩ』と比べてしまうと、スケールや濃度の面において寂しく、実にあっさりと読み終えてしまえるのが残念で仕方がない。ランドルフの過去のエピソードは遣る瀬無さ十分で読み応えがあっただけに、他の箇所の脆弱さが惜しい。
設定・伏線の消化率は低く、続編なり何なりで是非落とし前をつけて欲しいように思う。