書は言を尽くさず、

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森見登美彦 『夜は短し歩けよ乙女』

第20回山本周五郎賞受賞作。これは傑作。
前作『きつねのはなし』の幻想的なホラー感覚とはうって変わって、『太陽の塔』『四畳半神話大系』と似た雰囲気。その中でも、癖のある捻くれ方をしていた『四畳半神話大系』よりも、素直な捻くれが見られる『太陽の塔』寄りの雰囲気で、なおかつ直球ど真ん中の青春小説。
作品は4編に分かれており、いずれもしがない大学生である「私」(=「先輩」)と黒髪の乙女「彼女」(=「私」)の冒険のような活劇が、両者の視点から交互に語られる。
特筆すべきは洒脱な語り口で、ありきたりな設定と落ちるところに落ち着きがちな展開を補って余りある。この筆致に著者の作家性が集約されていると言っても過言ではないかも知れない。あと京都。