書は言を尽くさず、

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舞城王太郎 『暗闇の中で子供』

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

その俺は、自分の信じたい話だけを信じる。見たいものだけを見て、聴きたいものだけを聴く。やはりそういうのはまずいんじゃないかとも思うし、そういう風な人間なのだから仕方がないじゃないかとも思う。しかしそもそも俺の好むと好まざるに拘わらず、俺は自分の信じたい話しか信じることができないし、見たいものしか見れないし、聴きたいものしか聴けないのだ。

煙か土か食い物』に続く奈津川家サーガ2作目。
以下ネタバレ注意。
再読。
癖のある文体の問題を除いても好みが分かれる作品だとは思うが、舞城が割と正直に「物語」というモノに対する考え方を描いているように思え、好印象が持てる作品である。ただ、それにしても小説として非常にバランスが悪いし、奈津川家サーガの2作目として本作を持ってきたところも何だか微妙である。3作目がいつまで経っても出ないのは、本作の続きを書きあぐねているのか、それとも本作をもってシリーズの閉めとしたのか。














池の名前や橋本敬が2度死んでいる点などの明らかな矛盾とNINEでの記述(物語は嘘で出来ている云々)から、三郎の創作が大部分を占めていることは明白と言って差し支えないと思う。ただ、作中の「事実」と「虚構」の割合がどうも後者に偏り過ぎているのではないか。