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飛鳥部勝則 『鏡陥穽』

鏡陥穽
最近の飛鳥部さんは調子がいい。
「鏡」や「分身」という概念をテーマとしたモダンホラー。ホラーというジャンルに著者が初めて真っ向から取り組んだ作品だが、恐怖の演出法もグロテスクな描写も地に足が着いており、ホラーとしてだけでなく、もっと大きくエンターテインメントとしても充分に成功を収めているように思える。本格推理への偏りも今回に限っては見られない。
ただ、巻頭のタブローとそれの物語への関わりについては取って付けた感が拭えないが、あとがきで著者が述べているように後付けなので致し方ないか。
飛鳥部ファンやこってりミステリファン以外にも進められる、飛鳥部作品としては稀有な小説。