書は言を尽くさず、

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森見登美彦 『四畳半神話大系』

四畳半神話大系

おかげで私は「空気の読めない男」というレッテルを貼られた。しかしそれは誤解と言うほかない。空気が読めないのではなく、誰よりも細かく空気を読んだ上で、意図的に何もかもぶち壊していたのである。

傑作だ。惜しむらくは京都に住んでいたらもっと楽しめただろうに、っての。
面白い趣向だ。自虐的だが何故か誇らしげな語り口、自堕落で素っ頓狂な大学生活のエピソードなど、作風は前作『太陽の塔』とほとんど変わらない。ただ、中だるみしかねない構成なので森見作品未読者にはまず『太陽の塔』を薦める。その上で相性が良いと感じた方だけ読むといい作品だろう。
以下ネタバレあり。













第一話がくすぐったくもつつがなく終わり、第二話に入ると混乱し、第三話を挟んで、最終話で一応の集束。問題は第二話から第三話の部分で全体の構成の方へ思考が飛び中だるみしたり冗長に感じたりする点、第三話の時点でネタが大体想像ついてしまう点など。しかし、これらの点を差し引いても面白い趣向だと思うし、森見文体が肌に合う自分にとっては心地好い読書だった。