書は言を尽くさず、

本読んだりしています

森博嗣 『幻惑の死と使途』『夏のレプリカ』

S&Mシリーズ第6作および第7作。
この二作で語られるエピソードはそれぞれ別個のものだが同時期に進行している。前者には奇数章、後者には偶数章しかないのはそのため、と著者は語っている。
ではこの作品ごとの区切りには逆らい、章立てという純粋な時系列に従って、二作交互に読んでみようと考えた。
結論から言うと辛かった。本格ミステリというジャンルとしては、二つの事件が小出しに語られるとやはり散漫に感じられるし、二冊合わせると1000頁を超える(文庫版)分量がその傾向を助長もさせている。
しかし小説としては二冊をまとめて扱う価値があると思う。前者へ後者を差し込む形にすると、萌絵の成長を描いた物語としてはかなり深みが増す。
以前はこの二作だと後者の方が好みだったのだが、今回併せて再読したことで評価が逆転した。後者の評価が下がったわけではなく、前者の魅力をようやく理解した、というのが正しい。